山本大地

活躍している先輩の声 山本大地 出身大学:東京藝術大学楽理科 20歳からの藝大受験

プロフィール

ヴァイオリンを伊藤悠子、尾池亜美、タンゴ・ヴァイオリンを吉田篤、指揮法を寺岡清高の各氏に師事。
早稲田大学文学部を経て現在東京藝術大学楽理科3年。
楽理科有志と共にFemme Fataleを結成、アルゼンチン・タンゴを中心に幅広く演奏活動を行う。

音大受験を決めた頃の思い出はありますか?

私は元々一般大学に在籍していたのですが、2年次の折、新型コロナウイルス流行の影響でほとんどの授業がオンライン開講となり、サークル活動もほぼ停止。毎日家に引きこもり、かといって特に何をするでもなく悶々としていた所、「そういえば東京藝大には楽理科という学科があったな」ということをふと思い出しました。
楽理科の存在は高校生の頃から知ってはいたのですが、入試にソルフェージュと和声が必要ということで、とても今からでは間に合わないと、当時は進学の選択肢に入れていなかったのです。また、元々音楽史の勉強ができると聞いて入学した大学でしたが、いざ入ってみると音楽の文献すらほとんどないという状態でした(後で知ったのですが、意図的に置いていないそうです、何故)。
コロナ禍の閉塞感に限界が来ていたということもありましたが、これは挑戦するなら今しかないと思い、齢二十歳にして楽理科の受験を決意しました。
しかし、元々ヴァイオリンはずっと弾いていたのですが、ピアノが全くと言っていいほど弾けず、和声はもちろん、聴音、視唱といったソルフェージュも全く経験がありませんでした。音符の1つすら書いたことがなく、ヘ音記号もまともに読めないという有様です。また、楽理科の入試で課される小論文も、一見かなり掴みどころのない設問のものが多く、これはどこかでしっかり習わないと太刀打ち出来ないだろうと思い、色々調べたところミューズの存在を知り、入門に至ったという次第です。

東京ミューズ・アカデミーにまつわるエピソードを教えてください

新曲視唱、リズム課題は、元々初見や拍取りが苦手ということもあり苦労しましたが、先生が優しく教えて下さいました。
「ミスしても止まるな」というのは試験だけでなく、演奏においても大事なことだと、今でも意識しています。
和声課題はパズルのようで楽しく、先生も楽曲の実例を示しつつ教えて下さり、とてもわかりやすかったです。数字付き低音の感覚が中々掴めなかった私に歴史的背景から丁寧に説明して下さり、和声課題の範疇にとどまらず、大変勉強になりました。
ただ、ピアノに触れてこなかったこともあってか、私には和声感というものが欠落しており苦労しました。
同様に聴音も、多声部の旋律を取るのはおろか、四声体和声などは最初「ジャーン」としか聞こえず、本当に藝大の聴音が取れるようになるのか、正直に言うと受験直前まで不安でした。
楽譜が読めるということと、楽譜が書けるということは全く別なのだということ、そして今までいかに自分が適当に楽譜を読んでいたかを思い知りました。
]何度も同じミスを繰り返す私に根気強く教えて下さった先生には本当に感謝しています。
小論文も聴音の先生が指導して下さったのですが、毎週のレッスンは発見と絶望の連続でした。
まず、自分が抱いていた音楽観がいかに偏見に満ちたものであったかを痛感することになりました。
私は二回目の受験で楽理科に合格したのですが、最初の1年はほぼその偏見を取り除く作業に終始したと思います。かといって無難すぎる内容でも論にならず、全くと言っていいほど何も書けない時期もありました。
しかし、楽理科の大先輩でもある先生の豊富な知識と、それに裏打ちされた深い思考は本当に刺激的で、現在に至るまで、(そしておそらくはこの先も)私の音楽に対する姿勢の指針になっています。

現在の活動状況を教えてください

東京藝術大学楽理科入学後、バンドネオン奏者の鈴木崇朗さんを中心とした楽理科有志と共にFemme Fataleというバンドを結成し、精力的に演奏活動を行っています。
直近では、穂の国とよはし芸術劇場PLAT主催のプラットワンコインコンサートに選出頂き、3月、8月に演奏会をさせて頂きました。
また、以前所属しておりました早稲田大学交響楽団にて何度か指揮を務めさせて頂いております。
今後は演奏実践を行いつつ、「趣味としての演奏活動」の研究をしたいと考えています。

お問い合わせ

音楽自由人。もっとイキイキとクラシック。